派遣社員や契約社員は、「労働者派遣法」や「労働契約法」などで不利益な取り扱いがないように配慮されてはいますが、雇用契約期間に定めがあるため、会社の業績しだいで「退職」となる確率が正社員と比べて高いのが事実です。
派遣社員や契約社員が転職・退職をする際に、正社員とは違う部分もあり、どこが同じで何が違うのかと、迷ってしまう人も多くいます。
今回の記事では、派遣社員・契約社員の人が損をしないための転職・退職のコツを7つにまとめました。
まずは、派遣社員・契約社員の人が退職をする際に、正社員と取り扱いが異なる点から見ていくことにしましょう。

①派遣社員・契約社員と正社員の違いを知っておこう
最初は、正社員と派遣社員・契約社員の違いを確認しておきましょう。正社員とは、通常、雇用契約期間の定めがない社員のことを指します。
つまり、社員側から退職の申し出をするか、会社から辞めて欲しいと言われない限りは、定年まで仕事を続けることが可能な雇用形態です。
長期雇用が前提なので、賞与・退職金制度、病気になったときの求職制度などの適用を受けることができますが、転勤、出向を含む配置転換に応じなければならず、ゼネラリストとして会社が命じるさまざまな業務に対応し、さらには部下を管理する能力も求められます。
一方、派遣社員・契約社員は、雇用契約期間に定めのある社員のことを指します。つまり原則は、契約期間が終了すれば、雇用関係も終了するということです。
正社員のように長期雇用を前提にしていないため、会社は教育訓練や配置転換は、よほどの事情がない限りはおこないません。
雇用契約時に提示された勤務場所で、決められた仕事に従事するのが一般的です。賞与・退職金・休暇制度についても、ほとんどの会社では対象外となります。
契約社員は正社員と同じように、給料の支払いや仕事の指揮命令は、雇用契約を結んでいる会社からになりますが、派遣社員は給料の支払は雇用契約を結んでいる派遣ものと会社から、仕事の指揮命令は派遣先から受けることになります。
派遣社員や契約社員は、「雇用契約期間が終了すれば、雇用契約も終了」というのが原則となっています。1回の雇用契約期間は1年以内の場合がほとんどなうえ、必ずしも契約更新が前提とされていません。
正社員と比べて、失業のリスクが高いことから失業保険受給の歳に特別な取り扱いがあります。また、派遣社員については契約中断の際の社会保険(健康保険および厚生年金)で特別な取り扱いがあります。


②労働者派遣法が改正されるとどのような影響があるかを知っておこう
労働者派遣法が改正され、派遣社員として働く人は注意が必要になりました。改正の大きなポイントは、「期間制限」が変更されることです。
これまで、「専門26業務」に携わる派遣社員は、派遣期間の上限がありませんでした。しかし、今回の改正で、専門26業務とそれ以外の業務(「自由化業務)の区分けが廃止になります。
また、以前の「自由化業務」で「同じ業務では最長3年」とされていた制限が、すべての業務において「同じ労働者では3年」と、派遣期間の上限が定められることになりました(ただし、派遣元と向き契約を締結する「無期雇用派遣」では、3年の期間制限は適用除外になります)。
これによって、これまで「専門26業務」に携わっていた派遣社員は、改正法の施行日以降は、3年を越えて同じ部署内で勤務をすることができなくなりました。
そこで、派遣元企業に対しては、これらの派遣労働者に対して①派遣先への直接雇用の依頼、②新たな就業機会(派遣先)の提供、③派遣元事業主において無期雇用など、派遣社員の雇用安定に取り組むことが義務付けられたのです。
これまで専門26業務に従事していた派遣社員の人は、今後は3年以内の契約が繰り返されることを頭に入れておきましょう。
③円満退職のために退職時のルールを確認しておこう
スムーズに転職をするためには、現在の職場を円満退職することが必須条件です。そのためには、退職時のルールをあらかじめ確認しておくことが大切になってきます。
派遣社員・契約社員は雇用契約期間に定めがあります。この契約の場合、会社側、社員のどちらからも、よほどの事情がない限り契約期間の途中での契約解除の申し出はできないことになっています。
当たり前といえば当たり前のことですが、退職時のトラブルをさけるには、まず第一に、契約期間満了のタイミングで退職する(契約更新をしない)という選択がベストでしょう。
万が一、やむを得ない事情で契約期間の途中で退職をせざるを得ない場合は、契約社員は勤務先の上司、派遣社員は派遣元の担当者に事前に相談をして、承諾を得るのが良いでしょう。


④突然、契約更新を打ち切られたときはどうすればいいのか?
意図せずに会社側から契約更新を打ち切られたり、または契約期間の途中で解約されて、やむを得ず退職せざるを得なくなった場合は、どのように対処すれば良いのでしょうか?
まずやるべきことは、「雇用契約書」と「就業規則」の確認です。
会社側が社員を雇用する際に書面で明示しなければならない事項のうち、①労働契約の期間、②有期労働契約を更新する場合の基準、③退職に関する事項(解雇の事由を含む)について確認しましょう。
以下のケースでは何を確認するべきかを説明します。なお、派遣社員については、派遣先ではなく派遣元の規定、契約書を確認するようにします。
ケース1.契約期間途中での一方的な契約打ち切り
「会社が急に経営不振になったとき」「欠勤・遅刻などが多いとき」「周りの社員とトラブルばかり起こすとき」「業務の処理能力が著しく低いとき」などが解雇の自由として記載されているはずです。雇用期間に定めがある契約の場合、契約期間途中での解約は、よほどの事情がなければできません。会社側からの申し出の場合、「よほどの事情」というのは、退職に関する事項のうちの、「解雇の事由」に記載されています。
まずは、契約期間の途中で契約解除を行う理由を会社に聞き(できれば書面で通知してもらう)、合意ができない場合は、法律上は会社側からの一方的な労働契約の解除である「解雇」の扱いになります。
この場合は、契約打ち切り日の30日以上前の予告、もしくは、即時解雇の場合は30日分以上の平均賃金の支払を求めましょう(労働基準法20条)。
ケース2.契約期間満了での契約打ち切り
それ以外の場合は、「契約更新をする場合の基準」を確認したうえで、更新がなされないとするのであれば、具体的に何が該当しなかったのかを人事担当者に聞いてみると良いでしょう。そもそも契約を締結した際の契約書に「今回の契約で終了」「契約の更新はしない」など、明らかに契約更新の予定がない旨が記載さえている場合は、残念ながら、それを受け入れるしかありません。
雇い止めがなされた場合は、その理由を書面で求めることができます。契約解除もしくは契約更新がなされなかった理由に納得がいかない場合、まずは人事担当者と話し合いをしましょう。
⑤離職票の離職理由欄を必ず確認しよう
雇用保険に加入して働いていた人は、退職後に失業保険を受けることができます。失業保険とは、離職票に書かれた離職理由により、受給日数と、給付開始日が異なります。
契約社員・派遣社員の場合、離職理由の区分が正社員よりも細かくなっています。退職後、会社から離職票が届いた際に、必ず離職理由欄を確認するようにしましょう。
万が一、事実関係と違う内容で離職票が作成されている場合は、まず会社の人事担当者にその理由を確認してください。
事実と異なるにもかかわらず訂正されないときは、ハローワークで相談します。具体的に離職理由を確認するときには、以下のポイントを確認しましょう。
まず、契約期間の途中で退職したのか、契約期間満了で退職したのかで確認ポイントが変わります。
1.契約期間の途中での退職の場合
特定受給資格者となり、失業給付の受給日数が自己都合退職者よりも優遇されます。社員側の都合でやめた場合は、自己都合退職になるので、待機期間7日間の後、給付制限が3ヶ月あります。会社側の都合の解雇または退職勧奨の場合は、会社都合退職になるため、待機期間7日間のあと給付制限期間はありません。
2.契約期間満了での退職の場合
契約更新が何年にわたって、何度繰り返されたのか、雇用契約書を確認し、記載されている内容と照らし合わせるようにしてください。契約更新の確約の有無や、契約更新による雇用が3年以上かどうか、さらに、労働者から契約更新の希望があったかどうかで取り扱いが変わります。
ちなみに、雇用形態にかかわらず、雇用保険に加入することができる働き方とは、①週20時間以上の勤務、②働き始めたときの年齢が65歳未満、③31日以上の契約期間で仕事をする場合を指します。
③の要件については、31日以上の契約がないことが明らかな場合のみ、加入対象にはならないとされています。
たとえば、当初の契約期間が30日以下であったとしても、結果的に更新が繰り返され31日を超えた場合、勤務開始日に遡って雇用保険への加入を求めることができます。
退職後に失業保険を受給するためには、離職理由に応じて、6ヶ月以上もしくは12ヶ月以上の雇用保険への加入期間が必要ですが、1社での加入期間がそれに満たない場合であったとしても、複数の会社の加入期間を合算して12ヶ月以上(もしくは6ヶ月以上)になれば、失業給付を受給できます。
ただし、合算できるのは前職の離職と次の会社の就職までの期間が1年以内のものに限ります。その際に過去に失業給付の受給対象となった期間は合算されません。
短期間の契約の勤務であっても、明らかに30日未満の契約ではない限りは、雇用保険に加入してもらうように会社に交渉しましょう。
⑥派遣社員の契約中断の場合は、特別な取り扱いがあることを知っておこう
まずはじめに、会社で社会保険(健康保険および厚生年金)に加入できる働き方を確認しておきましょう。
社会保険に加入するためには、①2ヶ月を超える雇用契約期間であること、②1日もしくは1週間の労働時間、さらに1ヵ月の労働日数が正社員のおおむね4分の3以上であることが要件となります。
2ヶ月以内の契約で勤務をする場合は加入対象とはなりませんが、契約更新をし、2ヶ月を越えて勤務をすることになったときは、契約更新時から加入対象となります。
たとえば、当初1ヵ月の契約であって、更新後が3ヶ月契約の場合、更新後の契約開始のとき(勤務開始1ヵ月経過後)から、社会保険の加入対象者となります。
通常は、雇用契約の期間が終了すれば退職扱いとなるので、当然、社会保険の資格もなくなります。資格がなくなると健康保険証が使えなくなるため、任意継続の手続きをするか、もしくは国民健康保険に加入します。
ただし、一般派遣契約を結んでいる派遣社員には特別の取り扱いがあります。派遣先での契約期間が終了し、次の契約開始までの中断期間がある場合であっても、以下の条件を満たす場合は、引き続き社会保険に加入することができます(使用関係の継続)。
- 同じ派遣会社で、登録型の派遣社員として働くこと
- 契約終了時に、次に1ヵ月以上の契約の仕事が確実に見込まれていること(すでに契約が締結されているか、契約の締結が決定している状態)
- 契約終了後、次の仕事の開始までが1ヵ月以内であること
⑦将来の老後のために、できることは準備しておこう
年金制度には、会社員などが加入する厚生年金と、厚生年金加入者以外の人(自営業者、主婦、学生、無職の人など)が加入する国民年金があります。
老後に受給できる「老齢年金」だけではなく、事故や病気などで働けなくなった場合に支払われる「障害年金」や、自分がなくなったあとに家族の生活を支えてくれる「遺族年金」もあり、万が一の際の保障となるものです。
将来の年金受給額を考えると、国民年金だけに加入するよりも厚生年金に1ヵ月でも長く加入しているほうが有利となります。
国民年金の場合、保険料は全額自己負担で、自分が払った分だけしか将来の年金額に反映されません。一方、厚生年金は自分が負担する保険料と同額を会社も負担するため、自分が払った保険料の2倍の金額が、将来の年金額に反映される仕組みと考えられるからです。
退職後は、健康保険には任意継続制度がありますが、厚生年金には任意継続制度はありません。
さいごに
働くうえでは、さまざまな雇用形態がありますが、派遣社員・契約社員から正社員を目指そうというときには、一体どうすれば良いのでしょうか?
まずは、転職活動で「正社員採用がむずかしいから契約社員や派遣社員を選ぶ」という安易な発想をするのではなく、なぜ自分が契約社員や派遣社員を選んだのかをしっかりと考えるようにするのが良いでしょう。


正社員として雇用される努力を後回しにしてしまうと、年齢が増すにつれて、正社員採用どころか、就職することじたいが厳しいものとなってしまいます。
自分自身のライフワークやキャリアの目標を踏まえて雇用形態を選ぶべきですが、まずは正社員をめざす努力をするのが賢い選択です。








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