
いつの時代も安定した職業は人気がありますが、経済状況があやしい今、安定した職業になおさら就きたいと思うのではないでしょうか。
とはいえ、安定した職業として知られるパイロット、大学教授、大手企業の役員などは簡単に目指せるものではありません。
そこで本記事では、転職組でも狙えるという視点で安定した職業を紹介します。
巷で安定と思われている業界でも、職種や会社によって状況が異なるケースも多いので、その点もリアルに書きました。
安定した職業につくために理解すべき3つの大前提
安定した職業につくために、まず理解しておくべき3つの大前提について解説します。
終身雇用制度は崩壊したと認識する
安定した職業といえば、定年まで働けるというイメージがありますが、終身雇用制度は崩壊したと認識する必要があります。
公務員などの一部の職業を除き、どんな職業でも終身雇用が保障されないと思った方がいいです。
終身雇用制度はそもそも、大正末期から高度経済成長期に広がった制度です。
当時、労働者はより良い待遇を求めて転職を繰り返すのが当たり前でした。
そこで人材の確保や定着に苦労した企業が、終身雇用制度をはじめとした労働者に魅力ある雇用条件を約束することで、人材の定着を図ったのです。
ところがほぼ経済成長が止まった今の日本では、企業も将来を約束できません。
2019年には日本経済団体連合会の中西宏明氏が「終身雇用を前提にすることが限界になっている」、トヨタ自動車の豊田章男社長が「なかなか終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきたのではないか」と発言しました。
企業によって実情は異なりますが、先行き不透明な制度に頼るのではなく、終身雇用制度は崩壊したとの認識を持って職業や会社を選んでいくことが重要です。
副業解禁を自分の味方にする
いつの時代も、安定した職業が一定数あるのは間違いありませんが、時代が変われば必要とされる職業も変わります。
今が安定、成長していくとされる職業でも20年、30年後はわかりません。
その点で、副業解禁の波は自分の生活を守るものとして味方につけておきたいものです。
転職したら慣れるまでしばらくは本業への集中が必要ですが、その後は徐々に副業をして収入の柱や自分の生きがいを別に作っておくことも考えておきましょう。
そうすることで心に余裕が生まれ、自分の会社の状況を冷静に見つめたり、必要に応じて再度早めに転職したり、場合によっては副業を本業にしたりといった選択肢が増えます。
したがって、安定した職業への転職を考える場合、副業について企業側の考え(解禁しているのか、今後解禁する見込みはあるのか)を確認しておいた方が良いです。
人口減少と少子高齢化の未来を考える
これから日本は、世界のどの国も体験したことのないスピードで人口減少と少子高齢化が進むと考えられています。
つまり最低10年、できれば30年先までを見すえた職業選びが重要になるということです。
また、安定した生活を得るにはこの先何度か転職しないといけない可能性が高いと考えておくことです。
それにより、転職しやすいスキルや知識が身につく職業に就こう、という意識が生まれます。
結果的に、変化が早い時代であっても、常にその時代にあった安定した職業につくことができます。
30年先を見すえ安定した職業を選ぶ3つの基準


30年先を見すえ安定した職業を選ぶなら次に紹介する3つの基準を意識しておきましょう。
業界として伸びていく可能性が大きい
将来にわたる安定性を得たいなら、職業という点で見る前に、業界としての未来を考えておく必要があります。
少子高齢化の加速や感染症の脅威で医療業界、社会福祉関連の職業は今後も一定の成長が見込まれるでしょう。
デジタルやインターネット関連業、AI、ロボット産業なども成長が期待できます。
AIやロボットに奪われない
伸びる業界の一つにAIやロボット産業があるとすれば、逆にこれらに奪われない職業でなくてはなりません。
2015年に発表され話題騒然となった「10年後になくなる職業」という研究結果があります。
これは野村総合研究所と、オックスフォード大学マイケル A.オズボーン准教授、ベネディクト・フレイ博士とが共同研究で行ったものです。
研究では日本の601種類の職業について、AIやロボットなどで代替される確率を試算しました。
その結果、いま日本にある職業の49%がAIやロボットなどで代替可能と推計されたのです。
代替の可能性高い職業と低い職業、それぞれいくつかピックアップしました。
AIやロボットで代替される可能性が高い職業
- 事務員(一般、経理、医療、学校、行政)
- 駅務員
- 会計監査係員
- カメラ・自動車組立工
- マンション・駐車場管理人
- 銀行窓口係
- 金属加工・研磨工・製造検査工
- クリーニング取次店員
- 警備員
- 建設作業員
- スーパー店員
- 石油精製オペレーター
- 測量士
- 発電員
すでにAmazonなどが無人スーパーの実証実験を行っていることなどから予測される、スーパー店員や以前から話題に上っている事務員だけでなく、専門知識や技術が必要な製造業関連、人手不足が叫ばれる建設作業員などもあがっています。
AIやロボットで代替される可能性が低い職業
教育業界、カウンセリング業界、芸術分野など、人間ならではの感性やコミュニケーションが重要な職業は、これからも残っていくと考えられています。
転職に有利な知識や技術が身につく
この先、時代はますます早く変化していくでしょう。
今安定の職業、成長産業であってもその先どうなるかはわかりません。
安定に越したことはないですが、この先も転職の必要性が出てくると考えておくのが安パイです。
つまり、転職に有利に働く知識や技術、経験を積んでおくことが大切になります。
ITやAI、ロボット関連はプログラミングなどの技術面だけでなく、それらの技術を使ったコンサルティング力も重宝されるので、文系でもチャンスは多いです。
またコミュニケーション力、交渉力はどんな業界でも役立つので、こうした力がつく職業を選んでおくのも良いでしょう。
転職組でも狙える安定した職業7選|業界内の天国と地獄


転職組でも狙える安定した職業と同時に、一歩間違うと安定を失いかねない業界内の境界も紹介します。
地方公務員(行政・教師・警察・消防)
地方公務員は安定した職業の代表格ともいえます。
終身雇用制が崩壊した現代でも、定年まで安定した給与と雇用が守られる可能性が高い職業です。
一方で、働き方という意味での安定性には注意が必要です。
たとえば教師は、残業代がまともにつかない(つくとしても申請の手間と残業代とが見合わない)、モンスターペアレントや学級崩壊で心身を崩す、といったことが社会問題になっています。
行政職に関しても甚大化する災害対応、クレーマー対応などで疲弊する職員が続出。
もちろん政府も対応に力を入れてはいますが、予算も限られる中で簡単には解決されないでしょう。
それでも安定した職業ではあるので、職種や地方の選択を慎重にした上で転職を狙うのはありです。
インフラ系(電気・ガス・水道・通信)
インフラ系は人々の生活に必要なため雇用が安定し、地方の行政職と比べても給与が高い傾向にあります。
一方、季節や災害によりハードな現場も増えています。
たとえばガス事業は、需要の増える冬場は残業は当たり前、夜中や休日の当番対応や緊急出動も少なくありません。
電気事業は地震や台風など災害がある時には寝ずの対応、また近年は電力の自由化により価格競争やサービスの拡充が図られるなど、事業者や部署によっては大変になっています。
特に注意したいのが水道事業です。
税収の減少や施設の老朽化などで水道事業の維持が難しくなった市町村が、民間に売り渡すケースが出てきています。
民間のものとなれば、これまでのような雇用条件や安定性が保証されるとは限りません。
民間であれば当然利益を追求しなければならないので、仕事内容が厳しくなったり、条件が悪くなったりする可能性も高いでしょう。
通信事業に関しても一部は飽和しており、激しい競争にさらされている事業者もあります。
よってインフラ系の職業を選ぶ場合は、事業者や市町村の経営・経済状況を確認してから選んでください。
医療系(医師・看護師・薬剤師・技師・医療機器メーカー)
高齢化が進む日本では、医療系の職業は安定しているといえます。
しかし、転職組が真っ先に考えなくてはならないのが、普通の会社員からは簡単に転職できないということです。
医師、看護師、薬剤師、技師などは資格が必要ですし、資格を取得するためには専門の学校への進学、それらに関わる勉強や資金も必要になります。
一方で看護師や臨床検査技師については夜間学校が全国的にあるので、会社員との二足のわらじで転職を実現させる人がいるのも事実です。
医療系で安定した仕事を望み、4年間ほど大変でも資格取得まで頑張れるのであれば、転職は不可能ではありません。
なお、医療機器メーカーについては民間企業なので、企業ごとの経営状態をシビアに見る必要があります。
他の記事では「医療系の仕事なので安定」というコメントも見られますが、安直な考えは危険です。
競争が激しいので営業ノルマも厳しいですし、機器の故障等で休日や夜間に出勤しないといけないこともあることを知っておきましょう。
ただし特殊な部署でなければ、資格や特別な経験を求められないので、転職先としては狙いやすいといえます。


医薬品系(製薬・ワクチン・MR・MS)
医薬品系の職業は、業界自体は安定しているといえますが、業界内でも企業や職種選びを間違えると地獄です。
たとえば製薬メーカーで安定性を望むのであれば、新薬やワクチンの開発力及び製造力、バイオ系の開発能力がないと厳しくなるでしょう。
なぜならば、医薬品の売上自体は伸びていても、薬価(薬の価格)自体は毎年のように切り下げられているからです。
特に発売から一定年数の経った医薬品は大きく下げられるため、継続的に新薬を開発できるような技術や企業体力がないと雇用の安定は望めません。
近年、後発薬品のメーカーで不祥事が相次いでいますが、これも後発薬品だけだと経営状況が厳しいことを示唆しています。
同じように製薬メーカーの営業職であるMR、医薬品を各医療機関や薬局に販売する医薬品卸(営業職をMSという)も、今後は厳しくなっていくと考えられています。
インターネットやAI、配送システムの発達により、医療情報や医薬品の配送に人を介す必要がなくなってきているからです。
資格不要で転職できる業界ですが、各企業の研究はしっかり行ってから転職することをおすすめします。
IT系(システム開発者・コンサルタント)
経済産業省が2019(平成31)年4月に発表したデータ(*)によると、IT人材は45万人不足するとされています。
なお、ここでのIT人材が指すのは「システムコンサルタント・設計者」、「ソフトウェア作成者」、「その他の情報処理・通信技術者」です。
不足するということは、需要や待遇が高いので、安定した職業といえます。
ただし、需要の高いIT人材は専門的な知識や技術も必要なので、転職の難易度としては高いです。
(*)経済産業省 情報技術利用促進課「IT人材需給に関する調査(概要)」
政府系・系統金融機関
政府系・系統金融機関とは、主に政府が出資を行っている金融機関のことをいいます。
経済発展のために、中小企業や個人に融資を行うなど支援を行うのが仕事です。
政府が出資しているため倒産の可能性が低く、安定した職業といえます。
代表的な機関は下記の通りです。
- 日本政策金融公庫(JFC)
- 日本政策投資銀行(DBJ)
- 商工組合中央金庫(商工中金)
- 国際協力銀行(JBIC)
- 住宅金融支援機構(JHF)
機構にもよりますが、中途採用は狭き門なので、転職するのであれば早めに考えましょう。


設備・電力系(技師)
日本国内で人手不足で、需要が高いのが設備・電力系の技師(技術者)です。
設備や電力に関わる設備の点検、改修などを主な仕事にしていますが、業界自体が成長し続けているためずっと人が足りていません。
世界的に電気需要が伸びていく中、今後も設備・電力系の技師のニーズは高まっていくと考えられ、安定した職業となりえます。
「第二種電気工事士」「電気主任技術者」など、受験資格に特定の学歴や実務経験を求められない資格もあるので、転職でも狙いやすい職業です。
業界内の精度の高い情報を得るなら転職エージェントに相談
今後の経済や業界の流れを踏まえて、転職でも狙える安定した職業を紹介しました。
しかし、業界内でも企業や職種によってはこの先不安定な職業もあります。
外からは本当の状況がわかりにくいケースも多いので、企業情報にくわしい転職エージェントに相談するのがおすすめです。
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